INTERVIEW VOL.01

鴨志田 康人

ユナイテッドアローズ クリエイティブアドヴァイザー
Apr 06th, 2018
服を愛することは人生を豊かにする。

鴨志田康人さんが
ワードローブ トリートメントを
通じて思ったこと。

お客さまからお預かりした服、一着ずつと向き合い、その特性に合わせたメンテナンスを行う「ワードローブ トリートメント(WARDROBE TREATMENT)」。
一般的なクリーニングサービスとは一線を画し、“トリートメント”としてメンテナンスを行うことで、まるで新品を手にしたときのような感動を蘇らせます。
今回、日本のファッションを代表するお店「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」のクリエイティブアドヴァイザーを務める
鴨志田康人さんに「ワードローブ トリートメント」のサービスを受けてもらいました。
仕上がりを見て、鴨志田さんはどんなことを感じたのか? また長く服と向き合うことについて、鴨志田さんの考えを伺いました。

Text: Yuichiro Tsuji / Photo: Hiroyo Kai / Edit: Masaya Umiyama

服の仕上がりはもちろん、
お客さまへの配慮も大事。

今回、「ワードローブ トリートメント」のサービスを受けられて、いかがでしたか?

鴨志田:お見事としか言いようがないですね。本当に細かな点まで配慮が行き届いていて、素晴らしいサービスでした。服の仕上がりに関してはもちろんなんですが、それ以外の部分にも満足しています。

鴨志田さん曰く「ストライプが黄ばんだ状態だった」というスーツ。仕上がりはご覧の通り。ネイビーとホワイトのコントラストが際立ち、キリッとした引き締まりを感じる。「ワードローブ トリートメント」のこだわりは“一点洗い”。汚れ方に応じて適切な方法で処置を行うことで、服の魅力を蘇らせている。

具体的にどんな部分に感動されましたか?

鴨志田:まず服を預ける際、集荷に来てくれるんですね。それから預けた服に対して、こういう処置を行うという具体的な説明をいただいたんです。「ここにはシミがあるから、それを抜くためにこんなことをします」といった具合に。そして、その時点で仕上がりの日にちも知らせてくれました。服が戻ってきて、もちろんその仕上がりに感動をしたんですが、その前にもすごいなと思ったことがひとつあるんです。

というのは?

鴨志田:スーツやコートはハンガーに吊るして戻ってくるんですが、配送の段階で外れないようにハンガーがバーにしっかりと固定してあったんです。その固定の仕方に「絶対に外れてはならない」という明確な意思を感じました。荷物が揺れてグチャグチャになってしまったら、服にシワがついてしまいますから。それを未然に防いでいるんですね。

そういった気配りは、「ユナイテッドアローズ」のサービス精神とも通ずるものがあるような気がします。

鴨志田:そうですね。どれだけかっこいい服屋であっても、それを売るスタッフの心遣いが欠ければすべてが台無しになってしまいます。なので、お客さまへの配慮というのはいちばん大事にしていることなんですが、それと同じことを「ワードローブ トリートメント」のサービスにも感じました。

服の特性に合わせた仕上げに
プロの技術を痛感。

服の仕上がりに関してはいかがでしたか?

鴨志田:大満足でした。すごいなと思ったのはコートの仕上がり。英国の生地を使っていて、ウール特有のヌメりのある肌触りが気に入っていたんです。2000年にオーダーして、それ以来これを着て17回も冬を越してきましたが、さすがに自慢の風合いも衰えていた。ただ、クリーニングに出すとキレイになるのかもしれませんが、生地がパサついてしまって風合いが損ねてしまうと思ったので、メンテナンスはブラッシングする程度だったんです。

たしかに、一般的なクリーニング店では、生地の風合いまで配慮しているところは少ないかもしれません。

「仕上がりにケミカルな要素を感じなかった」と鴨志田さんが話すコート。羊の毛を洗う際に取れるラノリンという栄養分を生地に与え、本来ウールが持っている滑らかな質感を蘇らせている。

服は立体的に作られているものだからこそ、単にシワを伸ばすのではなく、その構造に合わせたプレスをかける。「ワードローブ トリートメント」は、メンテナンスに関することだけでなく、服に対する知識も掘り下げ、より適切な処置を行えるようにしている。

鴨志田:プレスも素晴らしかったです。いわゆるテーラードの服は、生地やパターンも大事ですが、その作りを生かすのはプレスなんです。戻ってきたスーツはショルダーのラインが美しかったし、ラペルもあえて甘い仕上がりになっていました。服の構造に対する理解も深いんだなと感じましたね。

日本ではキッチリとプレスをかけることが正しいとされているのかもしれません。でも、そうじゃない、と。

鴨志田:西洋では甘めが正しくて、ふわっとするかどうかがキモなんです。紳士服にはアイロンで仕立てを作っていく作業があるんですが、それに近いことをされているというのがわかります。

今回、シャツもお預かりしました。そちらはいかがでしたか?

肌に直接触れるだけに、汗シミなどが気になるシャツ。洗いとシミ抜きの工程を分け、段階的な処置を施すことで生地を傷めないように配慮。またプレスに関してもスーツと同様に、服に合わせたアプローチを行っている。襟の柔らかな風合いはもちろん、カフスのギャザーも、袖先に向かうようにアイロンを入れ、ふんわりとした質感を出している。

鴨志田:これはもうたくさん着て、絶対シミが取れないだろうと思っていたものなんです。それをあえて預けてみたんですが(笑)、ご覧のようにキレイになって戻ってきました。繊細な生地でアイロンもかけづらいんですよ。自分でどれだけ丁寧にやっても、ステッチのあたりにシワが寄ってしまったりするんですが、それがないし、プレスも完璧。これはイタリアのシャツメーカーのもので、甘くて柔らかい襟の反りが特徴なんです。それをしっかりと汲んでプレスされている。預ける際にとくになにも伝えなかったんですが、伝えずとも分かってらっしゃるあたりはさすがですね。

服を長く愛用するということは、
生活を大事にするということ。

服を愛用する上で、服選びの際に鴨志田さんが大事にしていることはありますか?

鴨志田:丈夫な素材をセレクトしたりとか、流行に左右されないデザインの服を選んだりとか、そういったことはしていますね。丈夫という点で言えば、英国のものづくりはすごく魅力的です。気候の関係で重くてしっかりとした生地をつくるし、そもそも子が親から服を受け継ぐという伝統が当たり前にありますから。

なるほど。

鴨志田:ファッションを楽しむ上でやはり刹那的なものを求めるときもあります。ただ、こういった場合でも自分が持つ基準に応じたものを選択することが、やはり大切になってくると思いますね。

長年服を愛用する上で経年変化は避けられないものだと思うんですが、そのことについて鴨志田さんが思うことはありますか?

鴨志田:革靴なんかがいい例ですが、20年履き続けたものなんかは、新品の状態では敵わない魅力を持ちますよね。そうした経年変化を魅力と捉えることができるのが、トラディショナルのいいところだと私は思います。靴は磨いたりすることで長く履き続けることができます。同じように服にも、メンテナンスが必要です。ただ着るだけではダメージを受けるだけですから、服を労わってあげることが長く付き合う上で大事になってきます。今回のサービスを受けて、それをより強く感じましたね。

最後に、いまは消費のスピードがどんどん加速する時代ですが、服を長く愛用することで得られるメリットはどんなところにあるか、鴨志田さんの考えを教えてください。

鴨志田:モノとの向き合い方は、人の生き方を表すものです。日々の積み重ねでそういうものは決まってくる。例えば朝食のメニューをどうするか決めるときに、自分で作るのか、コンビニで簡単に済ませるのか、それだけでも大きな違いがあります。その延長線上に服へのメンテナンスの考え方が存在すると思うんです。そういった選択のひとつひとつを丁寧にすることで、ライフスタイルがより豊かになるのではないかと私は思いますね。

PROFILE

鴨志田 康人 (KAMOSHITA YASUTO)
ユナイテッドアローズ クリエイティブアドヴァイザー
1957年生まれ。多摩美術大学卒業後、株式会社ビームスに入社。販売、メンズクロージングの企画、バイイングを経験。1989年に退社し、ユナイテッドアローズの創業に参画する。2007年には自身のブランド「Camoshita UNITED ARROWS」を立ち上げ。現在、クリエイティブアドヴァイザーとして、ユナイテッドアローズのバイイングから商品企画、店舗内装監修まで幅広い役割を担っている。

STORE CONTACT
法人のお客様へのサービスも行っております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
受付時間 10:00 - 20:00(日・祝休業)
CLOSE